コロナ予防ワクチンに関するQ&A(Insermフランス国立保健医学研究所による回答)
ヨーロッパでは、ドイツやフランスなど主要国で12月27日から新型コロナウイルスワクチンの接種が始まり、フランスではEhpad(要介護高齢者施設)の入居者や持病のある施設職員などからワクチン接種が実施されています。
1週間が経過した1月3日の経過報告によりますと、本日までに第1回目のワクチン接種を受けたのはわずか 352 人にとどまり、すでに16万5千人以上がワクチン接種を受けた隣国のドイツに大きく遅れを取っており、政府の目標である、1月中に100万人の接種を達成することは絶望的と見られています。
そのため当初は2月からの開始を予定されていた50歳以上の医療従事者への接種を1月4日から開始するとともに、1月下旬には各地に100近くの予防接種センターを創設するとの発表が保健相よりなされました。
計画の前倒しにより少しでも遅れを取り戻すことが期待されていますが、ベテランの医療従事者の接種率も低くなった場合には、一般の人のワクチンに対する懐疑心を更に高めてしまう可能性も否定できません。
現在、世界中で47種以上のコロナウイルスワクチンが臨床試験中です。
医学史上最短の速さで開発されたワクチンであることから、その開発と量産の速さ、そしてなによりも遺伝情報を記録した「メッセンジャーRNA(mRNA)」という聞き慣れないワクチンに対して不安を抱く人が多いのは無理もありません。
Inserm(フランス国立保健医学研究所)が市民からの代表的な質問や誤解に対してなされた回答をできるだけわかりやすくまとめましたので、ワクチンに対する不安があるかたは参考になさってください。
Q: mRNAワクチンによって、遺伝子が書き換えられてしまう危険性は?
A: ワクチンには様々が種類がありますが、役割はすべて一緒です。
被接種者の体を、その病気の発症をさせないまま擬似的にウィルスや細菌に感染した状態にし、自然に感染した場合と同様の免疫力(抵抗力)を作り出させることです。
ヒトの体には約10万種類ものタンパク質があり、これらは遺伝子にある遺伝情報から作られます。 遺伝子情報は、どの細胞にも存在する「DNA」の並び方で決まっています。
DNAが「生命の設計図」であるとしたら、RNAはその設計図をコピーしてタンパク質への情報の橋渡しを担っており、役割を終えると分解されます。
mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報を調べて人工的にRNAを複製し、その情報が細胞に伝達されると新型コロナのたんぱく質が作られ、免疫ができる仕組みです。
mRNAがDNAの情報を書き換えることはできませんし、mRNAの情報が子孫に引き継がれることもありません。
mRNAは体内で分解されやすく、安全性も高いとされています。
Q: なぜこんなに短期間に大量に作ることができたのか?
mRNAワクチンの利点として、開発のスピードが挙げられます。
理由は従来のワクチンの開発・製造工程の多くが省かれているからです。
従来のワクチンは、①ウイルスの活性を失わせた不活化ワクチンと、②弱毒化させた生ワクチンに分類され、卵などの生きた細胞内でウイルスそのものを増やして利用します。
mRNAワクチンにはウイルス由来の物質を含まないため、ウィルスの培養やウイルスタンパク質の精製に関わる作業が省略されます。
RNA分子はウイルス性タンパク質よりも単純であり、酵素的に合成され生成も早いことから、従来のワクチンに比べると製造期間をかなり短縮でき、同じ品質のワクチンを正確に大量に生産できることが可能になったのです。
また、mRNAワクチンは新型コロナウィルスのために開発されたわけではありません。
未来型医療の一環として、がん治療や心筋梗塞、アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳疾患、糖尿病など数多くの疾患の治療のためにmRNAを用いた研究がすでに10年以上前から進められてきたため、mRNAワクチン自体の開発や治験には多くの時間が費やされています。
Q: mRNAワクチンのメリットとデメリットは?
すべてのワクチンや薬と同様に、mRNAワクチンにもメリットとデメリットがあります。
投与されたmRNAはウイルスのタンパク質を作って役割を終えると、短時間で壊されてしまうので、体内に残ることはありません。
mRNAの寿命が短いことはメリットであり、デメリットでもあります。
体内に長く残らないことから長期的な副作用のリスクが低いと同時に、mRNAが体内からなくなった後に、免疫がどのくらい持続するかは未知数です。
1年、あるいは半年程度しか持たない可能性もあります。
それでも多くの人が免疫を持つことで、パンデミックを抑えるには充分な効果がありますし、ウィルスが変異した場合にも比較的速く対応でき、新たなmRNAワクチンを接種したとしても、体内に残っているワクチンによる副作用の心配はまずないとされています。
その他のデメリットとして英国や米国で、接種後のアレルギー反応が報告されています。
mRNAワクチン自体がアレルギー反応を引き起こす可能性は低く、アジュバント(薬効を高めるための補助剤)に反応した可能性が高いとされています。
鎮静剤を接種することにより症状が収まる場合が殆どですので、アレルギー体質のかた、以前にワクチンによる生体反応が出た経験のあるかたは、先に申し出ておきましょう。
簡単な説明でしたが、それでも不安が解消されない場合は主治医のかたに相談し、安心してワクチン接種に臨まれることをおすすめいたします。
(在仏日本人会)
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(12月9日掲載)
12月3日のカステック首相および健康大臣による記者会見で、Haute Autorité de Santé(高等保険機構)の判断に基づくコロナ予防ワクチン使用優先順位があきらかになっています。
このワクチンは無料でうけられます。
(第1段階 1月)
老人ホーム(Etablissement d’hébergement pour personnes âgées dépendantes、maison de retraite)の滞在者および就労者
*自宅に住んでいる方は集団生活ではないので対象外
(第2段階 2月〜春)
75歳以上
65歳〜74歳
51歳以上の医療関係者
並存症(糖尿病や高血圧など)をもつ医療関係者
(第3段階 春〜)
50歳〜64歳
ガードマン、教育関係者、食品関係者
体の弱い人、困窮者など
そして、徐々に一般へ
(大使館情報 ワクチン以外の処置も掲載されています)
https://zaifutsunihonjinkai.fr/news/news-7031/