心がラクになるヒント 第3回「子どもがなかなかいうことを聞かないときの対応の秘訣」/ 山田千晶 (Psychologue JP臨床心理士・公認心理師)
*フランスでの子育て、子どもの発達、発達障害について、また暮らしの中で役に立つ心理学の情報をお伝えできたらと思っています。
子どものことが大切だからこそ
早く寝て欲しい
自分で片付けられるようになって欲しい
自分で宿題するようになって欲しい
と思っているのにいうことを聞いてくれないことってありますよね。
優しくいっても全然いうことを聞かないから最後は強く言わないといけなくて、強く言っても反発されたり、渋々動いていて、また次の日も同じことの繰り返し。一体いつになったら自分から動いてくれるのだろうか。と思われている保護者の方も多いのではないでしょうか。
これって実は、こちらの想いが子どもに伝わっていないからなんで、子どもには、親は口を開けばああしろ、こうしろ、あれはダメだ、これはダメと注意や指示ばかりしか言っていないように感じられている可能性が高いです。その場合は、子どもには親が子どものことを大切に思っていること、愛情を持っていることは、理解されていないことが多いです。そして、どうせまた文句を言われるんだと、こちらの言うことに聞く耳は全く持ってくれないことになるのです。
ではどうしたら良いのでしょうか。
子どもがこちらの言うことを聞く気になるようにするのです。
つまり子どもが大切に思われている・愛されていると感じられるようにこちらも伝えると言うことです。
そのために参考になるのが、人々の愛情表現の仕方を5つのグループに分けたアメリカのゲイリー・チャップマン(Gary Chapman)博士によって提唱された「ラブ・ランゲージ」です。その5つのラブ・ランゲージは、言葉で伝える、クオリティタイム(一緒に過ごす時間)、サービス提供、プレゼント、スキンシップです。ポジティブ心理学者の松村亜里博士はここにさらに6つ目として傾聴と非言語のコミュニケーションを足しています。
言葉で伝える:「大好きだよ」「ありがとう」など言葉で肯定したり褒める
プレゼント:プレゼントをする
サービス提供:手伝いや世話をすること
クオリティタイム:ボードゲームやスポーツなどを一緒にして、お互いが積極的に関わる時間を過ごすこと
スキンシップ:ハグやキスなど肌が触れ合うこと
傾聴と非言語のコミュニケーション:相手の話に一生懸命に耳を傾けること、家事をしながらではなくて、子どもの話に集中して話を遮らずに聞きます。
子どものラブ・ランゲージは、子どもがどのように愛情表現するのか、どうしてもらうと愛情を受け取るのかの両方です。
例えば、プレゼントをもらうことが嬉しい子どもは、自分もプレゼントを渡すことで愛情を表現します。スキンシップで愛情を感じる子どもは、親に抱きついたり、膝にのったり、キスをすることで愛情を表現するといった具合です。言葉で伝えるのが好きな子は、「大好き!」と伝えてくれたりします。
特に子どもが小さいうちは、スキンシップやクオリティタイム、言葉で伝えることを喜ぶことが多いのではないでしょうか。親はサービス提供をしたり、誕生日プレゼントをあげたり必要なことを満たしてあげることで、愛情が伝わっているものだと感じがちです。しかし、子どもが喜ぶ言葉(ラブ・ランゲージ)は何か注意して観察して、その方法で愛情を表現することで、子どもに親が子どもを大切に思っていること・愛情が伝わり、自己肯定感や安心感を育むことにつながります。
「ラブ・ランゲージ」はオンラインで無料でチェックできます。
様子を見ていてもわからない場合は、試しにそれぞれの言葉を使ってみて反応を見てみることもできますし、カウンセリングでお話ししながら見つけていくこともできます。
親の愛情が伝わると、子どもは満たされて、聞く耳を持ってくれるものです。
このラブランゲージは夫婦・カップル間にも使えますので、ぜひ相手のラブ・ランゲージで大切に思っていることを伝えてくださいね。
山田千晶
参考文献
ゲリー・D.チャップマン 愛を伝える5つの方法 2007 いのちのことば社
松村 亜里 世界に通用する子どもの育て方 2019 WAVE出版
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山田千晶(やまだ ちあき)プロフィール
Psychologue 臨床心理士・公認心理師
フランス人の夫と中学生の息子とフランス、カンヌで3人暮らし。趣味は日本のドラマ鑑賞と散歩。日本の大学で心理学を学んだ後、フランスの大学院で心理学修士課程修了。日本とフランスで、インターナショナルスクールやクリニックなどでカウンセラーとして勤務。オンライン・対面心理カウンセリングや子育て相談、ペアレントプログラムなどを行っている。
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