鍼灸師のよもやま話(9)/ 岩本みずえ acupunctrice 鍼灸師
中医薬膳学では生のショウガを生姜(しょうきょう)、蒸して乾燥させたショウガを乾姜/干姜(かんきょう)と呼んで区別します。生姜も乾姜も性質は温める性質ですが、熱を加えた乾姜はさらに強く熱を加える性質に変わります。つまり効能が変わります。
生姜は、表面の寒気を飛ばし発散させる効能を持ちます。風邪初期の背中がゾクゾクする症状に、おろしショウガを加えた白湯を飲むと一気に熱くなり汗が出せます。体の表面にあり、中まで入っていない風の邪を汗と一緒に発散させるという考え方です。ちなみに生姜の皮には水巡り(浮腫)を改善する効能があるとされ、皮はやや体を冷やすとされます。真夏の食材に薬味として使う場合、皮ごとおろしショウガにすれば皮を剥いてからおろすより熱い感覚が緩和されます。つまり生姜の皮つき/皮なしでも体にこもった熱の状態によって使い分ける事が可能です。
生姜を蒸して乾燥させた乾姜は、より強く温める性質を持ち、身体を内側から温める働きが特徴になります。冷えによる腹痛、吐き気や下痢の症状に効果を発揮します。解毒作用もあるので、お腹を下しやすい方は、ナマモノを召し上がる際に意識して取り入れると良いかもしれません。ジンゲロールという成分に殺菌作用や、肉や魚の臭み取り、食中毒予防を期待出来ます。中華料理の最初に、ねぎ、ショウガ、にんにくをまず炒め油に成分を溶かし出します。肉の臭みを消すためでもありますが、生の生姜を炒めることで乾姜としてのの効能を生かしていると言えます。そして市販のパウダー加工の物は、加熱してあるので乾姜と捉えて良いと思います。
乗り物酔いによる吐き気にも効果的で、ジンジャー精油を内関というツボへ塗り込むようにマッサージすると酔い予防、吐き気をおさめる事ができます。
ジンゲロールには抗炎症作用、鎮痛作用があります。継続的に食べ続けることで、変形性関節症や関節リウマチの痛みが緩和されるとされています。寒さで痺れが伴う場合は、生/乾の組み合わせが良いです。
またジンゲロールにはインスリン値と代謝の改善を促進する活性化合物が含まれており、インスリン値が改善すると血糖をうまく細胞に取り込めるようになり、血糖が溢れにくくなるので糖尿病のリスクを軽減させることができます。
最後に生姜のショウガオール成分には抗酸化活性効果があると報告されています。癌を発症しやすい方には低体温が多いとされており、 生/乾姜の摂取で血行促進、体温上昇、抗菌作用と抗酸化による免疫強化が見込めるので、癌を予防する「可能性」のある条件が揃っていると言えると思います。
表面にある寒気を飛ばしたいのか、体の中(内臓)まで温めたいのか、炎症を抑えたいのか等で使い方を工夫してみてください。
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プロフィール : 岩本みずえ acupunctrice 鍼灸師
UFPMC(Union Française des Professionnels de Médecine Traditionnelle Chinoise
フランス中医学連合会) 所属、国際中医医師鍼灸師免許所持、パリ13区にて開業中。