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栄養士のよもやま話(9)「フランスで栄養士 」/ 小椎尾 真衣(こじお まい)Diététicienne-Nutritionniste 管理栄養士

フランスの栄養士って何をしている人?どうしたら栄養士になれるの?みなさんご存知ですか?

日本では、栄養士と管理栄養士があり、この2つの明確な違いとして、管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けた「国家資格」であり、管理栄養士養成施設で4年学んで国家試験を受ける、もしくは、栄養士養成施設で2〜4年学んだ後に実務経験を1〜3年積んでから国家試験を受けてなることができますが、栄養士は、栄養士養成施設で学び卒業することで、都道府県知事の免許を受けてなることができます。 具体的な仕事の違いとして、管理栄養士は病気を患っている方や高齢で食事がとりづらくなっている方、健康な方一人ひとりに合わせて専門的な知識と技術を持って栄養指導や給食管理、栄養管理を行います。栄養士は、主に健康な方を対象にして栄養指導や給食の運営を行います。日本の栄養士はフランスでは「Diététicien(ne)」となりますが、管理栄養士については私が法定翻訳を依頼した十数年前は、「Nutritionniste」と翻訳されました。今はどうなのでしょうか…。

一方フランスでは、「Diététicien(ne)」つまり栄養士は、「国家資格」として立場が保証されていますが、 「Nutritionniste」は、お医者さんが一定時間の栄養講習を受ければ、「Médecin-Nutritionniste」と 名乗ることもできますし、栄養士が「Diététicien(ne)-Nutritionniste」と名乗ることもできる…つまり、 「Nutritionniste」という職業が国によって保証されておらず、栄養関連に携わっているのであれば誰でも名乗ることが可能なのです。(Ingénieur-Nutritionniste という職業もあるようです…!)

フランスの栄養士は、栄養士養成施設(BTSかDUT)で2年間学び、フランスの学歴水準で言うところの「Bac+2」、」つまり「技術者」としてのレベル、お医者さん の最低学歴「Bac+9」と比較すると雲泥の差があります。 BTSとDUTでは試験方法も異なり、BTSは全過程が終了してから試験が行われる「Examen final」システム、DUTは「Contrôle continu」と呼ばれ、各科目が終了する毎に試験が行われます。またDUTでは大学での生物学の中のオプションとして栄養学専攻があり、全学生がDUT過程を卒業して栄養士を目指すのではなく、通過点として栄養学を学ぶこともあるようです。どちらかというと、BTSは専門学校的要素が強く、BTS修了後、栄養士として働くことを目的に学んでいます。
私個人は日本では管理栄養士養成施設(大学の管理栄養士専攻)その後国家試験を受け管理栄養士取得、フランスでは社会人枠から再度DUTで学び栄養士を取得しました。学ぶに当たって必要不可欠である教科が「解剖生理学」「生化学」の2つ、実際に仕事をしていく上で必要だと感じた教科が「コミュニケーション」「方法論」、もし個人開業をするのであれば「会計学」の知識も必要となります。また心理学の知識があればさらに相談者に寄り添えるでしょう。

このような制度的な違いはあっても、仕事内容としてはフランスでも日本とほぼ同じようなことを行っています。例えば、給食施設栄養士や病院栄養士、スポーツ栄養や薬局でのサプリメントのアドバイス、そして栄養バランスの取れた宅配メニューなどの顧客栄養サポートなど多岐に渡ります。
フランスでは、自分の看板を持って働くフリー栄養士が日本よりも沢山いますが、栄養士は処方箋を出すことができないので、専門医やかかりつけ医、理学療法士、言語視覚士、作業療法士など様々な医療従事者や准医療従事者と連携を取りながら、栄養面からの健康改善のアプローチをしています。また、フリー栄養士への栄養相談は社会保険の払い戻し適用範囲外となり、契約内容によっては Mutuelle(ミュチュエル)という共済保険(もしくは任意保険)で相談料をカバーすることができます。

フランスでは100%のフルタイム且つ正社員(CDI)でキャリアをスタートできることは非常に稀です。新卒栄養士は募集に対して応募が多く、個人で開業するフリーの栄養士を選ばない限りは「買い手市場」です。病院や企業は一般募集を掛ける必要がないため、応募者自らが履歴書を自発的に送り、口コミを拾い内部募集の時点で応募をするなど、常にアンテナを張っておくことが重要です。また、スタージュ(研修)先で認められ、偶然ポストに空きがあり働けるなどのケースも稀ですが存在します。いずれにしても、最初は30%や50%のCDDで経験を積み、その後空きが出た時点でCDIに切り替わるようなケースが大半です。

栄養士は生きる上で欠かせない食、そして栄養に関するアドバイスを行うことができるスペシャリストです。予防であれ疾病治療であれ個人栄養相談を受けるに当たって大切なことは、いかに相談者の本音を引き出せるかということです。病気の治療薬を処方できるお医者さんとは異なり、食事や栄養面からアプローチするので、結果が出るまでに一定の期間が必要となることが多々あります。また理論的なアドバイスをしたところで、理想論のみになってしまい、相談者が日々の生活に取り入れ、生活習慣を変えてくれるとは限りません。相談者の本音を引き出せてこそ、各々の経済的・社会的状況を踏まえた上での的確なアドバイスができ、相談者との間で信頼関係を築くことができるのです。また、相談者に寄り添い、共に解決策を模索し、結果それが相談者さんのお悩み解決に繋がった時こそ、この仕事を行う上での喜びややりがいを感じられる瞬間でもあります。

出典元:
日本栄養士会:管理栄養士・栄養士とは?
https://www.dietitian.or.jp/students/dietitian/
Ministère de la Santé et de la Prévention : Diététicien(ne)
https://sante.gouv.fr/metiers-et-concours/les-metiers-de-la-sante/le-repertoire-des-metiers-de-la-sante-et-de-l-autonomie-fonction-publique/soins/sousfamille/soins-de-reeducation/metier/dieteticien-ne

小椎尾 真衣(こじお まい): プロフィール

🇫🇷 Diététicienne-Nutritionniste 🇯🇵 管理栄養士
食いしん坊かつお酒も大好きで、2003年渡仏後(当初は長期休暇の予定・・・が)そのまま住み続けています。フランス、スイス各地で様々な職を経験するも、日本人と日本食の関係性と重要性を身を以って実感し、日本人の体でフランスの食生活にどのように適応していけるかを日々研究中。三児の母として食育にも力を注いでいます。
■在仏日本人会会報に「フランス生活養生訓」を連載中
■在仏日本人会サイトに「栄養士のよもやま話」を連載中
バックナンバー:https://zaifutsunihonjinkai.fr/activities/post-9124/