鍼灸師のよもやま話(13)/ 岩本みずえ acupunctrice 鍼灸師
中医学の概念の中に正邪というものがあります。正気は免疫システムや抵抗力、邪気は病原体及び疾患原因を表します。基本的に邪気は外的要因で、元々我々の体内に在るとは捉えません。つまりどのような環境下に生活するかで体調が芳しくなくなってしまう事もあるわけです。
今年の春は気温が安定せず、雨が多く、湿気もひどく(パリ周辺だけでしょうか)、症状に対して普段とは違う舌の状態や脈が増えていると感じます。
この天候による「湿邪」、外からの湿気が増えて体内に溜まる事があります。
通常「湿邪」は脾臓と併せて捉えますが、外的要因の「湿邪」は肺に溜まっていくと考えられています。通常よりも肩凝りを感じたり左右肩甲骨の間辺りに重さがあって、横隔膜がうまく動かず、深く呼吸がしにくく感じたりという違和感が出たりします。ため息をつきがちになる場合もあります。
肺は「悲哀」と関係する臓器と考えられているので、無力感や悲しみに支配されがちな方もいらっしゃるかもしれません。
手軽にこの「湿邪」を解消するには、前回お伝えした期門穴(横隔膜の辺り)を蒸しタオルなどでしっかり温め、周囲筋肉や筋膜の緊張を和らげてください。
また、発汗作用のある生姜、香味野菜、香辛料、利尿を促す瓜科野菜や海藻、胃腸の湿気をとる豆類、痰を取り除く(湿邪を動かす)きのこ類、大根、玉ねぎといった食材を多めに召し上がってみてください。
ニュースによると降水量自体は例年と変わらないらしいですが、私自身、説明のつかない不調和を感じています。早く新緑が太陽に眩しいお天気になりますように!
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プロフィール : 岩本みずえ acupunctrice 鍼灸師
UFPMC(Union Française des Professionnels de Médecine Traditionnelle Chinoise
フランス中医学連合会) 所属、国際中医医師鍼灸師免許所持、パリ13区にて開業中。