片川日本人会会長 新年のご挨拶

新年おめでとうございます。
令和8年の新春を迎えるにあたり、会員の皆様ならびにご家族の皆様にとって穏やかで実り多い一年となりますよう、心より願っております。旧年中は在フランス日本人会の活動に温かいご理解とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
17世紀の文人ラ・フォンテーヌの『狼と子羊』は「La raison du plus fort est toujours la meilleure(強い者の理屈が、いつも正しい)」という一句で始まります。国際社会では近年、この言葉を思い起こさせる出来事が相次いでいます。ウクライナをめぐる戦争は長期化し、民間人を含む甚大な被害が続いています。東アジアでも海の秩序をめぐる緊張が続き、力による現状変更が「法の支配」を揺さぶり、対話や合意形成が難しくなる局面が増えている――私たちはそうした現実と向き合わざるを得ません。
『狼と子羊』は、結局、狼が子羊を食べてしまうことで寓話は終わります。ラ・フォンテーヌはその結末に「その行為は裁判なしで行われた」と付け加えます。ここで言う raison(理屈・理性)を、物事の本質を考えること(penser)と捉えるならば、私たちは「どのような raison が la meilleure なのか」を問われているように思います。
「法の支配」が「力の支配」の前に無力化しないように――そして私たちの暮らしの平和と安全が損なわれないように――令和8年がそのための努力を重ねる一年であってほしいと願うものです。
このような不確実さが増す時代だからこそ、私たちの日常においては、恐れや分断に流されるのではなく、互いの声に耳を傾け、違いを越えて理解を重ねる姿勢がいっそう重要になります。小さな場面であっても「聴く」「伝える」「支える」という行動の積み重ねが、信頼を育み、暮らしの安心につながると信じています。
そして今、その「暮らしの安心」そのものが、在仏コミュニティの身近なところで揺さぶられています。昨年、パリ中心部に住む私たちの友人ご夫婦が強盗に襲われ、金品を奪われた上に殴る蹴るの暴行を受けて入院するという痛ましい出来事がありました。また別の事例として、タクシー代をカードで支払った際、夜間で金額確認が不十分だったため、後日明細を見て高額請求に気づいたという被害も耳にしています。こうした話は決して他人事ではなく、どなたにも起こり得るものです。日常の基本動作――戸締まり、訪問者対応、カード決済時の金額確認やレシート保管など――を、今一度ご家族で共有していただければ幸いです。
在フランス日本人会は、世代や立場を越えて会員同士をつなぎ、在仏生活の安心を支える“身近な拠り所”でありたいと願っています。領事・行政手続きに関する情報提供に加え、治安・災害・詐欺等への注意喚起など、会員の皆様に役立つ情報を分かりやすくお届けすることを大切にしてまいりました。これまでも週1回の「お知らせ」や当会サイトを通じて、会員の皆様に役立つ情報を迅速にお届けしてまいりましたが、今年も内容の充実と分かりやすさの向上に一層努めてまいります。困ったときには、どうぞ遠慮なく事務局にご相談ください。
当会は2028年に創立70周年という大きな節目を迎えます。これまで培われてきた歴史と信頼を礎に、次代を担う世代へ確かなバトンを渡すため、運営体制の整備とともに、会員の皆様にとって真に価値ある会とは何かを皆様とともに考え、実践してまいります。とりわけ財政基盤の確立は、次の70年に向けた喫緊の課題です。企業会員・個人会員の増加に加え、当会サイトならびに会報への企業広告の拡充を進め、安定的な運営と会員サービスの充実を両立させてまいります。会員の皆様におかれましても、周囲の企業・ご友人へのご紹介や、広告掲載をご検討いただける企業様へのお声がけなど、可能な形でご協力を賜れましたら幸いです。
新しい一年が、会員の皆様とご家族にとって健やかで穏やかに、希望と学びに満ちた一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
本年も在フランス日本人会への変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
令和8年1月吉日
片川 喜代治
在仏日本人会会長