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心がラクになるヒント 第2回「フランス生活でエネルギー消耗している時に自分でできる3つの対処」/ 山田千晶 (Psychologue JP臨床心理士・公認心理師)

*フランスでの子育て、子どもの発達、発達障害について、また暮らしの中で役に立つ心理学の情報をお伝えできたらと思っています。

子どもが学校に行き始めて日本語よりもフランス語が上手になってきていて少し寂しい
いつまで経ってもフランス語が上達しなくて半人前な気分でいる
フランス語に自信がないし言葉の壁があって仕事がなかなかできない
フランスでの日常生活で困っているわけではないけれど、ここでは自分の本来の力を活かせきれていない
とモヤモヤすることもあるのではないでしょうか。

実はそのように感じていらっしゃる方の声をよく耳にします。フランスにいる日本人だけではなく他の国籍の人や日本に住む外国人でも同じような思いをされています。海外に住むと、生まれ育ってきた環境とは異なる文化の中で、違う言葉、習慣、振る舞いだけではなくて、日常生活の小さな違い(日本よりもかなり大きなナスやきゅうりをどう料理するかなど)も学んで合わせていくことになります。近くに頼れる家族も友達もいない環境で、これまでとは違うことばかりなので、知らず知らずのうちにかなりエネルギーを使っているものです。また、就職、昇進、結婚や妊娠・出産、入学・進学など、ポジティブで嬉しい出来事も、今までと違った新しい環境への適応が必要になることなので、エネルギーを使います。私たちは、異文化の中で日々試行錯誤するだけではなく、家族の成長・変化とともに訪れる新しい環境にも適応しようと日々努力しているのです。知らず知らずのうちにたくさんエネルギーを使って疲労困憊になると、心身の不調になって現れてきて、不安やうつ、頭痛、腹痛などの症状が出てくることもあります。ときには、エネルギーを使いすぎて、こういった心と身体の症状も出るくらいですから、フランス語の勉強や新しく仕事をはじめる準備などに向けるエネルギーがないのも当然なのです。

では、エネルギー切れを感じた時はどうしたら良いのでしょうか。
エネルギーは使ったら回復させる、このバランスがポイントです。携帯電話を使うと充電が切れて、チャージすればまた使えるようになるのと同じです。今回は、3点すぐにできることをご紹介しますね。
①身体のエネルギーチャージ
まずはベースとなる身体のエネルギーチャージから。食生活を見直したり、ぐっすり眠れるようにするとエネルギーも回復しやすくなります。運動も定期的にすることで、不安や恐れが和らぎ、幸福感が増えたり、集中力が上がったり疲れにくくなります。また、不安や恐れを和らげるのに効果がある腹式呼吸もおすすめです。

②できていることに注目する
ご自身がこれまで頑張ってきたこと・できていることに注目しましょう。私たち人間には、元々「ネガティビティ・バイアス」があって知らず知らずのうちに自分や周りの足りないところやダメなところなどネガティブなことに注意が向きがち。ずっと自分や周りにダメ出ししていると、考えているだけでエネルギーを消耗させてしまい新しいことをするエネルギーが湧いてきません。ご自身のできていること、いいところ、強みにも注意を向けましょう。「ごはんを作れた。」「歯磨きができた。」「ゴミをゴミ箱に捨てた。」など些細なことでも、できていることがたくさんあるはずです。当たり前と思うことでも注目して、「よし!できた!」と自分に声をかけてあげましょう。

③ご自身が興味があることに没頭する時間や趣味を持つ
フランス語はできるに越したことはないですが、日常生活に困っていないのであれば、まずは、ご自身がワクワク楽しめる活動を一日の中に取り入れることをおすすめします。そうすることで、エネルギーが湧いてきたり、視野が広がってきたりします。もちろん一人でできることでもいいですし、機会があれば、現地の習い事や活動ができると地元の人たちとの交流もでき、フランス語を趣味や興味があることを通して使うことができますね。まずは楽しいことから始めましょう。もし楽しいことすら思い浮かばない、何もする気がしないという場合は、専門家の力を借りてみるのもおすすめです。カウンセリングがご自身の興味や関心に気づくきっかけになるかもしれません。

いかがでしたでしょうか。フランスに住んでいると様々な文化の違いや言葉の壁があって日常生活を回すだけでエネルギーを使い果たし、前に進めていない気持ちになることもあると思います。そんな時は、ご自身が日々エネルギーを使っていることを労り、まずはご自身のエネルギーチャージをしてあげましょう。エネルギーチャージがしっかりできると、新しいことにも取り組むことができるようになってきますよ。

山田千晶

参考文献:
ジム・レーヤー (著), トニー・シュワルツ, メンタル・タフネス 成功と幸せのための4つのエネルギー管理術, 2004, CCCメディアハウス
野上 麻理, ピークパフォーマンス (Japanese Edition), 2021, WAVE出版
松村 亜里, お母さんの自己肯定感を高める本, 2020, WAVE出版
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山田千晶(やまだ ちあき)プロフィール
Psychologue 臨床心理士・公認心理師
フランス人の夫と中学生の息子とフランス、カンヌで3人暮らし。趣味は日本のドラマ鑑賞と散歩。日本の大学で心理学を学んだ後、フランスの大学院で心理学修士課程修了。日本とフランスで、インターナショナルスクールやクリニックなどでカウンセラーとして勤務。日本に住む外国人や海外に住む日本人へオンライン心理カウンセリングや子育て相談、ペアレントプログラムなどを行っている。
HP yamadachiaki.com
Email contact@yamadachiaki.com

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