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内科医のよもやま話(4)「認知症の発症は予防できる」

2020年に始まったコロナ禍により、高齢者も感染予防のために閉じこもりがちになりました。その結果、身体的フレイル(脆弱)に加えて、精神・心理的フレイルが進み、認知機能低下が増えています。コロナ禍が明けた今、仕切り直してフレイルを予防し、健康寿命の延伸を願うところです。
今回は、健康寿命を短縮させる原因疾患の代表である認知症の予防について、認知症危険因子からアプローチします(参考資料1)。
「認知症の発症が予防できる」という概念は、比較的最近認識されたものです。
まず2017年、英国の医学雑誌Lancetの認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会は、認知症の発症リスクを高める危険因子のうち、本人が意図すれば改善可能(修正可能)な9つの危険因子を掲載しました(参考資料2)。
その後、3つの危険因子を加えて、2020年に12の危険因子を改善することで、およそ40%の認知症が予防できることを発表しました(参考資料3)。
一方、世界保健機関(WHO)は、栄養的介入の必要性も唱え、2019年に「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を公表しています(参考資料4)。

以下、認知症の12の危険因子を示し、具体的な“お勧め”をご紹介します。

これらに対して、日々の暮らしで例えば以下を意識することで、危険因子を減らすことができると考えられています。

 すべての子どもたちに初等・中等教育を提供する
 40歳前後から中年期に、収縮期血圧130mmHg以下の維持を目指す
 聴力低下に対しては補聴器の使用を奨励し、過度の騒音曝露から耳を保護する
 頭部の怪我を防ぐ (単発重度頭部外傷はアルツハイマー型認知症の罹患率を高める。反復性軽度頭部外傷は慢性外傷性脳症(ボクサー脳症)を引き起こし認知症の原因となる。)
 アルコールを完全に中断するか、ほぼ無害なレベルにする (週10単位(1単位は、純アルコール20g)以上の飲酒は避ける。)
 肥満と糖尿病を防止・治療する
 中年期以降の身体活動を維持する
 禁煙する(途中からでも認知症のリスクを減らすことができる。)
 大気汚染や副流煙を減らす
 高齢期以降の社会参加を維持する

2023年12月20日、アルツハイマー病の原因物質に直接働きかける薬が日本国内で初めて保険適用となりました。日米の製薬会社が共同で開発した新しい治療薬(レカネマブ)で、アルツハイマー病の原因として脳にたまるとされている異常なたんぱく質、「アミロイドβ」を取り除くものです。対象は、認知症を発症する前の「軽度認知障害」の人、アルツハイマー病発症後早い段階の人です。
健康寿命を目指し、自分らしく暮らし続けるための参考にしていただければ幸いです。

参考資料
1) 日本抗加齢医学会誌2023:12
2) Lancet 2017 Jul 19.
3) Lancet 2020 Aug 8
4)「認知機能低下および認知症のリスク低減」のためのWHOガイドライン(2019)

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久住静代(くすみしずよ)プロフィール:
東京の赤坂おだやかクリニック名誉院長。抗加齢医学の専門医として、人生100年時代、いかに老化のスピードを遅くして、生涯、健康に自力で心豊かに生きるかという課題に取り組んでいます。

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