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鍼灸師のよもやま話(14)/ 岩本みずえ acupunctrice 鍼灸師

残暑もなくあっという間に朝晩は10度を切ってしまう秋になってしまいましたね。
南の方はそれでもまだ暖かそうですが、しっかりと気温差に備えるべきだなと思い、今回は秋の臓器に値する「肺」について考えてみました。
中医学において肺の働きは主に2つあります。
宣発(せんぱつ)作用「発散・拡散」という気(体を温め動かすエネルギー)・水・栄養を全身に拡散させる作用は息を吐くときに発生し、二酸化炭素などの濁気(だくき)を放出します。宣発作用が不調になると呼吸機能が低下し、気や水を全身に拡散させにくくなり、体の表面から悪いものが入りやすくなって風邪をひきやすくなります。
続いて粛降(しゅくこう)作用という呼吸器官に酸素などの清気(せいき)を吸い込んだり、気や水を上から下に降ろしたりする作用です。息を吸うときに粛降の作用が発生します。粛降作用が不調になると、呼吸機能の異常が現れます。体外に出すべき濁気が詰まるので、息切れ・喘息・咳が引き起こされてしまいます。
肺は、宣発作用と粛降作用によって気と水を司る五臓です。とくに、水の循環については、肺が水を全身に行き渡らせ、回収する「通調水道」(つうちょうすいどう)を司るとされています。肺が体に巡らせる気と水は、汗の出方にも関わり、肺が肌の表面へ運ぶ気が足りないと、汗腺を引き締める気も不足して汗が出やすくなったり、逆に汗が出にくくなったりもします。
粛降作用は腎臓と大腸にも大きく関わります。秋は肺ですが、冬は腎臓の季節になります。しっかりと呼呼吸をすることで両臓器を活性化する事に繋がります。
前置きが長くなりましたが、私自身、呼吸についてあまり意識する事なく生活してきました。休暇前にクライアント様に呼吸のアプリケーションを教わり、自分の呼吸が想像以上に浅い事、しっかりとした鼻呼吸が出来ていない事に愕然としました。
口でなく鼻で呼吸をする大切さは、二酸化炭素を沢山吐きださないところにあります。
吸った酸素は肺から血管へと入り血液中のヘモグロビンによって運ばれます。酸素が必要な場所に来ると、ヘモグロビンより切り離されて組織(細胞など)に移動しますが、切り離す役目を担っているのが二酸化炭素です。そして酸素を最も多く必要とする組織は「脳」です。ヨガでは鼻から呼吸をする事で交感神経(右)、副交感神経(左)を活性化しリラックス効果を高めたりもします。空気が鼻を通る事で、ウイルスや細菌や埃を濾過しながら身体により近い温度に調節したりもします。肺からの粛降作用で濾過されない濁気が大腸に降りると大腸ポリープを形成する腸内細菌になるという研究もあります。
綺麗な清気を循環させる事が、クリアな思考や健康を保つ事に繋がる事をご理解いただけると思います。
ただ残念な事にストレートネックを始めとして、年齢を問わず姿勢が悪い方が非常に増えています。正しい鼻呼吸を促す筋肉が衰えているように見受けられる方が多いです。
この秋は姿勢と呼吸に留意してお過ごしになってみてください。

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プロフィール : 岩本みずえ acupunctrice 鍼灸師
UFPMC(Union Française des Professionnels de Médecine Traditionnelle Chinoise
フランス中医学連合会) 所属、国際中医医師鍼灸師免許所持、パリ13区にて開業中。

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