「日本館セミナー」10月例会 / パリ国際大学都市
「日本館セミナー」 10月例会
日時 2025年10月29日 (水) 18時〜
場所 パリ国際大学都市・日本館グランサロン
7c, boulevard Jourdan, 75014, PARIS
タイトル: ラカンはフロイトをどう読んだか「症例鼠男」を題材に
報告者:松本卓也
京都大学大学院人間・環境学研究科
報告概要
「フロイトが創始した心の病の治療法である精神分析への注目が日本ではふたたび高まっている。かつて「科学ではない」「治療効果のエヴィデンスがない」「神経科学によって駆逐された」などと言われたこともある精神分析が、それらの批判を乗り越え、たとえばアタッチメントやメンタライゼーション等として、あるいは「神経精神分析」として息を吹き返しているのである。けれども、現代的な意匠をまとったそれらの「新しい」精神分析にとびつく前に、そもそも精神分析とは一体何であったのかを考えてみるべきではないか。
フランスには、まさにそのような仕切り直しをした稀有の精神分析家がいた。ジャック・ラカンである。ラカンといえば「フロイトへの回帰」というスローガンで知られるが、それは単なるフロイトの理論の読み直しでなく、フロイトの「五大症例」と呼ばれる臨床の核心に迫ることによって、精神分析とは一体何であるのかを再定義することでもあった。今回は、特にフロイトの「症例鼠男」を題材に、ラカンがフロイトをどのように読み、その際にクロード・レヴィ=ストロースやモーリス・レーナルトのようなフランスの知をどのように援用したのかを論じたい。」