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片川会長寄稿「 笑顔が免疫力を高めます」 最終回〜笑顔を世界に

半世紀以上にわたって生命科学の研究に携わり、高血圧をひき起こす原因となる酵素 「ヒト・レニン」 という遺伝子の解読に世界に先駆けて成功した日本人がいます。筑波大学名誉教授の村上和雄先生です。
先生は、また 「心と遺伝子」 の相互作用の研究に取り組まれています。その一環で、笑う事が遺伝子にどのように影響するか研究されました。

先生は、笑いが糖尿病患者の血糖値を改善できるのではないかとの仮説を立てて、実験されました。
一日目はボランティアの糖尿病患者に軽い昼食を取ってもらった後すぐに、大学の先生の糖尿病の仕組みに関する講義を聴かせて血糖値を測ったところ123mgに上昇。
二日目には、同じく昼食後に今度はお笑い漫才を聴かせたところ血糖値は77mgまで低下。

先生はこの研究のために吉本興業と提携していました。
漫才を担当したのは 「佐賀のがばいばあちゃん」 でブレイクした島田洋七さんのB&B。先生はB&Bが舞台に上がる前に次のような事を言って2人のアドレナリンを高めたそうです。「もしこの実験が成功したら間違いなく糖尿病研究の歴史に残る。笑いと血糖値、笑いと遺伝子についてはまだ誰も研究していないからだ」。
結果として、気難しい大学の先生のユーモアも冗談もない真面目な講義を受けた後の血糖値と、漫才で大笑いした後の血糖値に46mgの数値差がでたのです。
この研究の論文は、アメリカの糖尿病学会紙に掲載され、先生の名前は世界中に知れ渡ることになりました。

先生は、くすりは逆から読めば「リスク」になる。必ず副作用を伴なう。だから薬の代わりに笑いを…と提唱されています。
そういえば、笑いには副作用はないですよね。
笑い転げて死んだ人って聞いたことがありません。笑い過ぎてアゴが吊ったとか、お腹の皮が痛くなったということはあるかもしれませんが。
村上先生は笑うことによってどの遺伝子のスイッチがオンになりどの遺伝子がオフになるかの研究をされた人で、その全体像はまだつかめていませんが、言えることは、健康に良い遺伝子が笑いによってオンになり、健康に悪い遺伝子がオフになるということのようです。免疫細胞の活性が上がり、既に前回お話ししたNK細胞がオンになることは確認されています。

ところで、皆さんは、日本の神話で笑いが出てくる神話をご存知ですか。
「神話と歴史を忘れた国は滅びる」 と、かの有名なイギリスの歴史学者アーノルドトィンビーが言っています。皆さんの答えは 「はい、もちろん知っています」 であるものと推察します。古事記に書かれている岩戸隠れの話がわが国に残されている最も古い笑いの一つと思われています。神々が暮らす空の上の高天原の統率神、アマテラスオオミカミは弟が乱暴者でいう事を聞かないことに腹を立て、天岩戸という洞窟に閉じ籠もります。
アマテラスは太陽の神ですから、太陽がこの世から消えたことは生き物にとっては大ピンチです。食べ物は育たなくなり、病気が次々と起こります。
八百万の神々は集まってどうしたら天岩戸の扉を開かせることができるかブレーン・ストーミングします。

色々試してもうまくいかず、最後は大宴会を行い、女神アメノウズメは、ほぼ全裸になって、おもしろおかしく踊ります。
飲めや歌えのドンチャン騒ぎにストリップショーまで付いて、神々は抱腹絶倒の大爆笑です。その笑い声が天岩戸にこだまして、アマテラスは何事かと思って岩戸を少し開くと、待ってましたとばかり、力持ちの神様がアマテラスを外に連れ出し、再び世界に光が戻ったという有名なアマテラス岩戸隠れの神話です。
この神話は何かを伝えようとしていると思いませんか。
そうです。この世界から太陽が消えたということは、生き物にとっては絶滅の危機。そういう危機を救ったのが、“笑う” 事だったと教えているんではないかと思うのです。

いま、共通の敵を相手に世界中が闘っています。
「頑張ろう、世界よ!」 は当然ですが、 「笑顔で」 を加えて 「笑顔で頑張ろう、世界よ!」 と呼び掛けたい。

今日から禁足令が解除されました。しかし、コロナが消滅したわけではありません。
危機意識が薄れるとコロナの逆襲を許し解決への道も遠のきます。
そうなると、笑いも 「笑い事じゃ」 なくなります。
引き続き自らの行動に責任をもって、行動して行きましょう。

令和2年5月11日
片川喜代治
在仏日本人会会長

『笑顔が免疫力を高めます」その1〜 笑って過ごしていますか はこちらから。
「笑顔が免疫力を高めます」その2〜Natural Killer を活性化しよう はこちらから。