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フランスの現在のcovid-19医療現場について / 折口達志先生より

コロナ第2波によってフランス全土に外出制限令が出ている中、医療現場でのリアルな状況に関する質問に、家庭医療内科研修医 折口達志先生がお答えされている記事を送っていただいたので、許可を得てこちらにシェアいたします。折口先生は、第1波の時も現場からメッセージをくださったお医者様であり、また、次回のオンラインいきいき健康サロン「予防医学」の講師もしていただきます。(日本人会)

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以下のような質問が来ましたので情報を共有いたします。
Q:仏のコロナの感染状況が悪化しているというのが、自分の周りの状況からは、あまり実感として感じられません。
本当に病院には重症患者と亡くなる方が増えているのか、それさえ疑問に感じてしまいます。少しでも現場の実際のお話をうかがえればありがたいです。
A:みなさま こんにちは。2回目のロックダウン中でございますが、いかがお過ごしでしょうか。病院やキャビネで勤務されてる方、テレワークに移行した方、みなさまお忙しいことと思います。第一波を乗り切り、比較的平穏な夏が過ぎた後のこの第二波の現状について、みなさまと情報共有したいと思います。
自分は11月からパリ郊外病院のコロナ専門病棟にて研修中です。当初は内科(Médecine Interne)の予定でしたが、研修開始10日前より第二波の対応のため病棟全体がCOVID-19肺炎患者専用に切り替わっていました。看護・介護師の人数不足のため、ただいま数室閉鎖し、18床の病棟になっています。普段の内科で扱うような患者は、違う科での宿泊入院、もしくは日帰りや自宅入院という形で診療を行っているそうです。通常であれば、内科というのは検査を重ね、診断をし、治療法を考え、様々な知識を扱う興味深い専門です。ですが、COVID-19肺炎は治療法もなく、各患者プロトコールに従い診療にあたるしかありません。自分勝手ですが、今回の波が落ち着き、いち早く通常の研修内容に戻れることを願っております。
新型コロナ患者を専門病棟に集中させることによって、他の科は外科など一部除いて通常に近い診療ができているようです。病棟はCOVID19肺炎で酸素吸入治療が必要な患者で埋まっております。中には普段なら通常病棟では扱わない10~12リットル以上必要な患者もいます。その上この肺炎は悪化速度が著しく早く、患者本人は気づかないうちに必要な酸素吸入量が一気に倍増することが多々あります。集中治療への連絡はある程度の酸素必要量からあらかじめ行いますが、移転は15リットルでも足りないような状況に限ります。医療従事者のみなさんならこの異常さと怖さをわかっていただけることと思います。
病院の集中治療室は20床中16床をCOVIDにあてており、必要であれば今後拡充する予定だそうです。埋まっていることが多いですが、今回の波は多くの病院が対応しているため、今の所パリ市内および郊外の病院群にはまだ病室の余裕はあるそうです。ですが楽観視はできません。現在も第二波は続いており、ピークアウトもまだ断言はできません。酸素吸入治療が必要なCOVID患者は回復まである程度日数を要します。今の所は酸素が必要でないところまでもしくはリハビリ科に転科できるまで入院させていますが、患者数が増えてより早い回転率が求められた場合は必要な酸素量が少なくなった時点で在宅治療に切り替えるなどの対応をせざるを得ません。
第一波同様、新型コロナ流行への対抗は我々医療従事者の努力はもちろん不可欠ですが、その他の方達にも対応をお願いせざるを得ません。利他的な精神が自然な我々と違い、一般の方に第三者への配慮をお願いすることは酷なことだと思いますが、ご自身や大切な人のために感染予防の努力を理解していただくよう引き続き情報発信していくことが大切です。助かる命を見捨てるような状況には決してしてはならないです。すでに異常な状況ではありますが、まだなんとかなっています。少しづつですがロックダウンの効果もすでに出ているようですし、気を引き締めて頑張っていきましょう。
クリスマスや大晦日、今年は家族や少数の友人など限られた人数で祝うことになると思いますが、新型コロナによって変化せざるをえない生活様式のなかでも楽しみ方は見つかるはずです。医療への関心もそうですが、社会や生活のありかたを進化させる機会だと思っています。まだまだ長い戦いになると思いますが、頑張っていきましょう。みなさまどうぞご自愛ください。
(11月13日 研修医 折口達志)