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新年のご挨拶 / 在仏日本人会会長 片川喜代治

新年おめでとうございます。

令和4年の新春を迎えるにあたり、会員の皆様とそのご家族のこの一年のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、世界の富裕層と貧困層の格差が広がっています。世界の上位1%の超富裕層の資産の世界全体の個人資産に占める割合が37、8%になり、コロナ禍に過去最高に達したことが、経済学者100人超による研究でわかりました。ワクチンや財源不足によって発展途上国が打撃を受け、コロナ禍の2年ほどで格差が大幅に悪化したわけです。一方、世界銀行はこの期間に世界で1億5000万人が極度の貧困に陥ったと推計しています。
ウイルス対策で喫緊の課題となっているのは、ワクチン接種をめぐる格差の問題です。資本や技術力のある先進国で接種が進む一方で、途上国には十分行き渡らない状態が続いています。ワクチン接種率が地域的に偏れば、変異株発生のリスクが増すと指摘されています。我が国を始めとして、先進国が途上国に対して、資金の拠出やワクチンの供給を可及的速やかに行う必要を感じています。そのためには「国家を超えた協働」が今年ほど求められる年はないと思います。

環境に多大な負荷をかけながら成長を進めてきた代償である地球温暖化に伴う気候変動という危機も「国境を越えた連帯」なしには乗り越えられません。エジプトでは、オリーブの昨年の収穫量が前年より5割減だったと報じられています。原因は、前年度の冬の気温上昇にあります。例年なら10度から12度の冬場の温度が17度を超えていました。専門家によると、地中海地域の年間平均気温は、19世紀の後半と比べて1.5度上昇しているといいます。昨年のCOP26で、産業革命前と比べて世界の平均気温の上昇幅を1.5度未満に抑えることが合意されました。そして2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指すことになりました。脱炭素時代への移行を進めるとき、痛みを伴う社会全体の変革が必要となります。エネルギー構造を変えようとする大変革でもあり、「Just Transition=公正な移行」が求められます。欧州ではCO2排出量の少ない天然ガスへ移行しましたが、現在ではその値段が過去最高値を記録しています。再生エネルギーの配線や電気自動車に使われる金属の価格、電気料金まで上昇しています。岸田首相も年初に、提唱する「新しい資本主義」の柱の一つに温暖化対策を挙げ有識者会議を始動させて、「クリーンエネルギー戦略」を立てようとしています。未来を生きる子供たちのためにも、気候変動は「このまま放置しておいたら大変なことになる」ことを皆様と共有しながら、今後の動きを注視していきたいと思います。

コロナ禍のなか、人と人とのふれあい、友達や仲間との交流、会話と笑いを弾ませながらの食事、気分転換と精神のリフレッシュに欠かせない旅、子供たちの様々な学校行事、人生に色彩を与えて心豊かにしてくれる文化・芸術活動などの機会が減ってしまいました。この状況はしばらく続きそうです。だからこそ、知恵を絞り、創意工夫をしてできることを取り組む、人と人との触れ合いを忘れてはならないと思います。いまこそ、わたしたちは相手を思いやり、支えあって進んでいくことが大切です。

日本人会では、人が人を大切にし、支えあっていける仕組みを構築するため「日本人相互扶助基金」を昨年設立いたしました。この相互扶助基金の理念は、『Un pour tous, tous pour un』『一人はみんなのために、みんなは一人のために』であります。フランス全土に在住する日本人が直面する様々な困難に手を差し伸べ、一層の強い絆で共存・共栄できるよう、その橋渡し的役割を担うものです。今年はこの「日本人相互扶助基金」の運営を具体化していく元年であると考えております。すでに寛大なるご寄付をしていただいた方には改めまして深く感謝の意を表します。皆様のご理解とご支援があって初めてこの「日本人相互扶助基金」に“命”を吹き込むことが出来るからです。

コロナ禍は、私たちの生き方そのものを大きく揺るがしました。私たちの立つ足場のもろさを実感した2年だったかもしれません。今大切なのは足元を見直すことではないでしょうか。お互いさまの思いやりで支えあい、人の痛みや悲しみを理解する。知恵を絞って元気づける。大丈夫だよと声をかける。年をとっても、困難に遭遇しても日本人社会には“支え”があるから安心。そういう日本人が1人でも増えてくれれば、更に明るい日本人コミュニテイになります。新しい年は今までマスクに隠れていた笑顔が街に溢れることを願っています。

看脚下。 本年もよろしくお願い申し上げます。

令和4年1月吉日
片川 喜代治
在仏日本人会会長