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内科医のよもやま話(2)「女性の更年期障害」/ 久住静代(くすみしずよ)内科医

閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といい、更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わない(器質的疾患によらない)ものを「更年期症状」という。その中でも症状が重く日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」という。

更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことですが、そのうえに加齢などの身体的因子、成育歴や性格などの心理的因子、職場や家庭における人間関係などの社会的因子が複合的に関与することで発症すると考えられている。更年期世代の30~40%がケアや治療を要すると言われている。
◆ 早い時期に現れる症状
①血管運動神経症状:顔のほてり(ホットフラッシュ)、発汗、動悸、胸の圧迫感、呼吸困難、熱感
②精神・神経症状:イライラ、興奮しやすい、思考がまとまらない、不安、抑うつ、不眠、物忘れ、喉にものが詰まった感じ、音に敏感、味やにおいが分からない
③身体症状:肩こり、首こり、手足のしびれ、めまい(フワフワ感)、頭痛、頭重、疲れやすい、関節痛

◆ 更年障害チェックリスト:簡易更年期指数(SMI、Simplified Menopausal. Index)
下記の表に自分の症状に応じ、点数を記入し、その合計点数をもとにチェックしてください。

更年期障害指数の自己採点の評価方法:
0~25点 問題なし。
26~50点 食事、運動に気をつけ、無理をしないようにする。
51~65点 外来で、生活指導カウンセリング、薬物療法を受けた方がよい。
66~80点 長期(6ヶ月以上)治療が必要。
81点以上 各科の精密検査が必要

通常は、このSMIや問診によるチェックを行い、血液中のホルモンの分泌量を測定する血液検査を実施する。がん(子宮頸がん、子宮体がんなど)、うつ病など精神科の病気、ホルモンの病気、耳鼻科の病気の検査を併せて行う場合もある。

◆ 治療
1) 非薬物療法
社会環境要因の改善、生活習慣の改善指導・カウンセリング、心理療法

2) 薬物等療法
①ホルモン補充療法:HRT, Hormone Replacement Therapy)
少量のエストロゲンを補う治療法。エストロゲン単独では子宮内膜増殖症のリスクが上昇するため、黄体ホルモン(国産の天然プロゲステロン)を併用する(エストロゲン・黄体ホルモン併用療法)。HRTに用いるホルモン剤には飲み薬、貼り薬、塗り薬などいくつかのタイプがあり、またその投与法もさまざまである(参考資料3))。HRTは、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗など血管の拡張と放熱に関係する症状に有効だが、その他の症状にも効果がある。

注意) HRPには、禁忌や副作用など、様々な注意が必要。治療を希望される方は産婦人科専門医への相談が必要。

②漢方薬:当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸など、保険適応薬が多数。

③向精神薬:抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬など。

④サプリメント:エクオール、還元型コエンザイムQ10、ピクノジェノールなど。保険適応不可。

⑤プラセンタ注射
更年期障害に対して効果が期待されているプラセンタを2週間に1回程度のペースで筋肉内注射。
女性の更年期障害には保険適応可。

参考資料
1) 抗加齢医学会誌2023:04
2) 日本産婦人科學會雑誌 1999: 51: 1193-204.
3) 公益社団法人 日本産婦人科学会
4) 小山嵩御夫 産婦人科治療 1998::76(増刊号:756

治療を希望される方は、産婦人科専門医や抗加齢医学専門医にご相談下さい。

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久住静代(くすみしずよ)プロフィール:
東京の赤坂おだやかクリニック名誉院長。抗加齢医学の専門医として、人生100年時代、いかに老化のスピードを遅くして、生涯、健康に自力で心豊かに生きるかという課題に取り組んでいます。

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