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ブルゴーニュでのスローライフを夢見て!! 〜第1章〜/ランドリー加藤由香/ n°298


パリの暮らしも東京の生活も、そして海外を飛び回るワークライフも長らくこなした後、ふと気がつくと仕事中心、夫婦別居な私達がいました。
ちょっとスローダウンしたライフスタイルを、
窓から鉄筋ビルが見えない環境で、
自然に囲まれた暮らしを、
フランスの田舎の一軒家で暮らしたい、
豊かな食生活と美味しいワインと共に‼︎
田舎暮らしを謳歌する60代の自分達を想像しながら、そんな夢を抱き始め、夫婦でこのプロジェクトを目指し動き出したのは2015年頃でした。グルメで料理好きな夫と、食のPRを手掛けた経験もある私が行き着いたのは、過去に何度もバケーションで訪れていた「ブルゴーニュ」。CDG空港からもパリからも比較的行きやすく、しかも丁度、ブルゴーニュの葡萄畑(クリマ)がユネスコの世界遺産に登録されたばかりという時期で、今後さらに魅力が増す地域だと確信したからです。

この地方には何人か親戚や友人もいて、また夫が幼少期をディジョンで過ごした思い出も合わせ自然な選択だったのかも知れません。葡萄畑が見える家、建物が密集する町や村の中心地ではなく、かといってあまり自然の中で孤立する物件ではなく、徒歩圏内に何かしらの店舗がある様な環境で程よい距離の田舎家。もちろん古い家、フランスの風情ある石の家を探しました。しかし、、、葡萄畑に隣接するようなメゾンは、たいていワイナリーファミリー所有、またはトラクターなども備える大きな農業設備のある小さな家。う〜ん、そうですよねぇ。ここは圧倒的に皆さん農家さんばかり。そんな物件はそもそも売りに出ないか、地域のワイナリー同士で相続やら買収が行われ、一般には公開されない物件がほとんど。それでも根気よくインターネットを駆使して探し続けること3年。その間、なかなか面白い分析も出来ました!
地方の田舎家物件は、売りに出るときはかなり高い金額です。売り手が欲張るからでしょうか(笑) しかし、半年、一年と追っていくと、どんどん価格が下がっていきます!売れないから焦るのでしょう。そうした経過を熟知して交渉に臨む方がお得です。売りに出てすでに3〜5年以上経っている売れない物件には、それなりの理由があります。エージェントがそれらをキチンと説明できるか、価格に説得力があるか、などいろいろと我々も勉強しました。地方の不動産屋は効率悪く、やる気のない営業担当ばかりで役立たず。こんな物件を探しているので、あったらご連絡お願いします、と残しても連絡が来たことは一度もありませんでした!頼るはインターネット情報のみ。パリに居ながら日々のネット検索を続け、ブルゴーニュの不動産市場を虎視眈々を睨んでいた夫。半分は諦めかけていた2017年、一つの新しい物件をネットで発見しました。直ぐに見に行けないので、現地の友人にまずは情報を聞いて確認してもらうと、「手入れの行き届いた良い家みたいだ、直ぐに見に来た方がいいぞ」とのアドバイス。翌日にブルゴーニュへ足を運び、エージェントに会えたのでした。2017年、まるまる3年間のメゾンハンティング(10数軒を訪問した末)を経てようやく出会った19世紀の邸宅は、ブルゴーニュ南部のCôte Chalonnaise(コート・シャロネーズ)に位置するRULLY(リュリィ)という村にありました。ブルゴーニュの中心地Beaune(ボーヌ)からさほど遠くなく、TGV駅Le Creusot Monteau (ル・クルーゾ・モントー)からも車で30分圏内、ワイン街道近く、などなど地図上にコンパスで印した希望圏内です。

いずれはメゾンドットをやっていきたいという構想の元、ベッドルーム4−5個は必要だった事、大々的な修復工事は避けたかったので傷みの少ない物件、村の中心地へ徒歩で行かれる距離、適度な距離のご近所さん、広大過ぎない庭、そして葡萄畑を一望できる古い家、これらほとんどの条件をクリアし、しかも予算内という一番重要なポイントを抑えて即決となりました!!諸々の売買契約、書類手続きを終え、メゾンの鍵を手にするまでの長かった事!しかも鍵の数、大きさ、半端ないのです!

さらにここフランスにして信じられないほどラッキーだった点。それは、メゾン売り手のファミリーの方々がなんと礼儀正しく、親切。始めに訪問した際は家具をはじめ古い旅用トランクやお孫さん達のオモチャ等々が屋根裏や物置を埋め尽くしていましたが、どの部屋もピカピカに掃除され、不用品はすっかり処分され、気持ちよく入居する事が出来たのです。最悪を予想し、大量のゴミ袋と掃除道具を担いで来ただけに、これは正に幸せなサプライズでした。
売手マダムは、このメゾンの歴史です、とファイルを一つ手渡してくれました。そこには、メゾンの過去の賃貸契約書(1906年)や売買契約(1920年)、工事を施した業者さんリストなど、手書きの書類や写真などが丁寧にファイルされています。
「これからはあなた達が管理していってくださいね」と。
こんな素敵な『家』との出会いに、夫と共に感謝で一杯でした。
こうして私たちのブルゴーニュ・ライフは始まりました。
初めましてのブルゴーニュ、人生初の大きな屋敷、庭にそびえる大木、明らかに濃い空気と光の眩しさ、何もかもが新鮮です。観光客ではなく住人になった感覚、土に根付く、そんな不思議な満足感は、フランス人である夫と日本人の私とではある種違いはあるものの、共通の「夢」の実現第一歩となりました。
人生一度きり、やってみたい事はやってしまうに限ります!
当時はまだ日仏を行き来しながら仕事をしていた私は、業者も絡む大工事は、夫に指揮のほとんどを託し、仕事の合間にはインテリアショップ、カーテン屋さん、壁紙やペンキの資料集めなどにいそしみ、雑誌の切り抜きを眺めながらまだまだ夢見心地でありました。内装設計士とかインテリアデザイナーという職業が世の中にキチンと存在する中、予算削減も兼ねてできる限り自分たちでやりたい夫の意向もあり、素材、道具、専用機械などを買い集め、Castoramaへ通う日々。。。 ハラハラドキドキにリノベーションが進行していくのです。(つづく)

ランドリー加藤由香 プロフィール

大学卒業とともにモード界に就職。 HANAE MORI にて東京、NY、MONACO勤務を経た後、PARISオフィスに転勤。約12年間 勤めた後、CHANELの時計宝飾部門マーケティングを担当。結婚後はPRエージェントとして独立。時計とガストロノミーの分野に特化したPR活動を 続けるかたわら、夫と共にブルゴーニュでの「メゾンドットClos d’Agneux 1840」のプロジェクトを始め現在に至る。
Clos d’Agneux 1840
2, impasse d’Agneux 71150 RULLY
Tel. 06 48 59 97 67 contact@agneux1840.com www.agneux1840.com

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