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医療従事者の皆様、そしてそれ以外の健康のために尽力されている皆様へ。(フランスのコロナ病棟研修を終えたインターン生より)

ご無沙汰しております。家庭医療内科研修医2年、そして名ばかりですが邦人健康サポートの会の代表の一人の折口達志です。
感染対策の規制緩和の予定が発表されましたが、私も今日でコロナ病棟を離れ、明日から小児科での研修に切り替わります。
この一年間最前線に多く身を置きましたが、奇跡的に私自身そして家族の誰一人感染及び発症することなく過ごせました。
長く苦しい戦いから解放されることに安堵しておりますが、少しばかりは寂しい気持ちもあります。
これほど毎日クラックル音を聴診したり、ひどい状態の肺のCT画像を見たり、多量の酸素が必要な患者を診ることは今後もうないと思います。3桁診てきた症例数のうち、多くが回復し退院し、少なくない数が集中治療室に移ったり、当科で亡くなったりしました。倫理的な問題、感情的に難しい場面など多々ありました。実践的な医療の勉強は限定的になってしまいましたが、この半年間で経験したことは医師として人として大事なことを学ばせてくれたと思います。
医療崩壊という言葉がよく使われるようになりました。通常の診療、治療運営ができないという意味では確かに崩壊しています。高齢者のコロナ患者の集中治療のハードルもかなり上がりました。多くの方に手術などの処置を延期させてもらうなど、多大な迷惑をおかけしています。
ですが一部の国のように助かる人を見殺しにするような事態はなんとか免れています。
この異常で特殊な事態を乗り越えた後、パンデミック以前よりも理想的な医療運営ができるように努力することが大事だと思います。
この状況を打破する上で、みなさんご存知の通り予防接種が不可欠です。私個人は1回目にアストラゼネカを打ち、12週間後にファイザーのブーストを打ってもらいました。せっかくこの国でも加速してきた予防接種に、副作用に対する不信感や不安などがブレーキになることがないように、しっかり情報共有そして発信していくことが重要だと思います。
状況は好転しつつありますが、今も現場での激闘は続いております。より多くの方が助かるための努力を日夜重ねています。外出制限がなくなっても、日常的な感染予防対策はしっかりと遵守していきましょう。
ある重症の患者さんが「感染してから何気ない日々の尊さに気づいた」とおっしゃっていました。未来の家庭医療内科医として、健康のための生活習慣に関心が集まることは不幸中の幸いと思います。
いつかどこかでこの一年の経験を振り返れたらと思います。
私は第一線を退きますが、今後も心を、魂をすり減らしながら戦い続ける医療従事者達へ敬意を表します。私も未熟ながらフランスの医療従事者の一員となれていることに誇りを感じていますし、より多くの方のサポートができるよう精進していきたいと思います。
まだまだ終わりは見えませんが、がんばりましょう。皆様どうぞご自愛ください。(折口達志 研修医)


*写真は、昨年11月の日本人会オンラインいきいき健康サロンで「予防医学」について講演をしていただいた時のもの。この時の折口先生のセミナーのレポートはこちらからご覧いただけます。(日本人会)