会報 / 最新号コラムより
パリ日本語補習校だより/ n°283
政府の通達により学校が閉鎖され、補習校も3月14日(土)の授業を最後に、遠隔授業を始めることになりました。いろいろなやり方があると思いますが、どの家庭でもできるように、15分程度の音声ファイルを録音して作り、PDFやワードと一緒にメールで送り、それを家庭で聞いて学習してもらう。書いたものをスキャンか写メで教員に送ってもらい、それを見て添削やコメントをして送る。という形の通信教育方式にしました。
私はNHKラジオ講座を中1から聞き始め、大人になってもずっと聞いていました。テレビ講座は楽しいですが、ラジオの方がより集中して勉強できます。古典的な方法ですが、学習効果はより期待できると思います。聞く力を鍛えられると思います。
小さな音声ファイルですが、前週の録音を聞き直したり、低学年と高学年で話すスピードを変えたり、言葉の付け加えをしたりしているとびっくりするほど時間がかかります。子供たちの姿が目の前にない今、彼らの様子や反応をすべて想像して言葉にするのに苦労します。
思わぬ音が入ってしまうこともあります。猫の泣き声、犬のいびき、外の鳥の声、隣のうちの子供の声、家族のドアの開閉音、電話の呼び出し音・・。録音の場所と時間の確保も難しいです。
台本を書いて読む練習をして録音。やっと終わって聞いてみると、間違い発見。それで、録音し直したり、編集したりで時間がどんどん過ぎてしまいます。でも、回を重ねるごとに要領をつかみ、うまくできるようになってきた気がします。
低学年では、音声を再生する時に「先生から見えているの?」と子供が聞いたら、「ちゃんと見えているよ」と言って緊張感を持たせてくださるご家庭も・・。教員の声を聞くと姿勢が良くなる、ピリッとして集中して勉強できるなどの保護者の声もいただきました。ご協力、応援ありがとうございます。
いつも元気とやる気をもらっている生徒の笑顔もなく、孤独に授業をしていますが、メールに添付して送られてくる絵日記の絵や日記の文章から、外に出られず不自由な中でも楽しく過ごしていることが伝わってきて、癒されます。お母さんも音声ファイルを聞いてくださったり、一緒に漢字テストをしてくださったり、家族で楽しんでもらってもいるようです。普段どんなふうに授業を受けているのか見る機会になったかもしれません。
書いたものを写真に撮られる!と思うせいか、宿題の字がだんだん上手になってきたような気もします。
遠隔授業がもうしばらく続きそうですが、ピンチをチャンスにできるように、頑張りたいと思います。
パリ日本語補習校主任教師
廣重 幸美