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舞台裏より愛をこめて続・番外編 / 小笠原尚子 / n°300


「まぁ!パリにお住まいだなんて、なんと素敵な‼︎」と、仰って下さる機会が度々ございます。「いえいえ、そんなそんな、えぇまぁありがとうございます。(ただ…実のところはなかなか根気が必要なんでございます。今に至っては円安、物価高騰はとどまるところ知らず、来月のアパルトマン家賃なぞ、払えるかどうか心底ヒヤヒヤものなのでございますのよ)おほほ。」と、“能楽師狂言方の妻”的体裁を整えるため(カッコ)内の言葉をグッと噛みしめ心にしまうことしばしば。
そんな“仕事云々の前に住むこと自体が大変な国、おふらんす”今回は過去の番外編に続き、堂々第二弾、またも“滞在許可証”に纏わるお話です。この“滞在許可証”に関するあれこれは、まるでバイオリズムかの如く一定の周期で我々一家を苦しめて下さいます。
前回の番外編の出来事から二ヵ月後、モンマリ宛に“滞在許可証受け取り予約を入れて下さい”との連絡がポツリと入り…そこからさらに二ヵ月経ちました11月、第弐回延年之會公演のためパリにおりましたモンマリは、ようやく“生”滞在許可証を手に致しました。しかも、次の仕事へ向かうパリ出国の前日という綱渡りぶり。

さて、そこでようやくわたくし共母息子、手続きスタート地点に立つことが出来たのでした。と申しますのも、滞在許可証更新オンライン申請でアカウントへ入り、手続きをと思いきや、“OGASAWARA Tadashiが、本証を受け取った後にあなたの申請受付は可能となります…のでしばしお待ちを。的な、何とも容赦のないメッセージが画面に現れていた状況でして、モンマリの滞在許可証ゲットを受け、お預け状態の手続きがようやく動き出した訳なのです。
鼻息あらく無事申請を済ませしばらく経ちました1月16日、またまたポツリと連絡が…「1月24日に登録証発行センター外国人受付口へ来て下さい」Youpi !と、飛び上がって喜ぶべきメッセージのはずなのですが、ん?déjà-vu⁈はい、そうなのです、そこまで父に倣わなくても…でございました。つまり、指紋採取の必要があるので窓口へ来なさいと。父の二の舞か⁈ 本来ならなんでもないことなのですが、折しも、息子は新年の舞台を務める為に一時帰国中、一月は何かと予定が詰まっておりどうにか戻れて数日間…さぁどうしたものか、母と息子の間で時差をもモノともせずメッセージやり取りの嵐。一週間後の“出頭”に向け、座席表ならぬ、カレンダーとにらめっこ。とうとうやりくりをしてパリ2泊の日程を絞り出し、お次はフライトチケット…
前記の通り何もかもが価格高騰中…彼なりに心許ない小笠原家家計を考え、超格安チケットをチョイス、シンガポール乗換片道42時間…これは、パリ滞在期間、並びにフライト時間で、父親の持つ記録を破るカタチと相成りました。
斯くして、父に倣いてKIX⇄SIN⇄CDG 8千里の旅、指紋採取と書類受理は無事完了し、あとは“生”滞在許可証の受取連絡を待つばかり。日仏往き来の旅芸人には辛いところ、現時点では『第参回パリ延年之會』開催の為、息子の身体がパリにあります故、何とかこの期間にポツリと連絡が届かぬものかと切望致す今日この頃でございます。本日はこの辺で。
平和への祈りを込めて。

小笠原尚子(おがさわらたかこ)プロフィール:
“やんちゃ狂言師の裏方古女房” 東京生まれ。神戸→名古屋→横浜→佐渡ヶ島育ち。故八世野村万蔵主宰“わざおぎ塾”にて学生時代に演劇を勉強中、狂言師小笠原匡と出逢い1996年に結婚、伝統芸能の世界に入る。その後、大阪生活を経て2014年よりパリ在住。現在、パリで狂言普及活動の傍ら、自らは役者業を再開⁈(このエッセイでは、日仏文化体験を通し、狂言師一家の四半世紀を振り返ります)

バックナンバー
舞台裏より愛をこめてvol.1 / 小笠原尚子 / n°290
舞台裏より愛をこめてvol.2 / 小笠原尚子 / n°291
舞台裏より愛をこめてvol.3 / 小笠原尚子 / n°292
舞台裏より愛をこめてvol.4 / 小笠原尚子 / n°293
舞台裏より愛をこめてvol.5 / 小笠原尚子 / n°294
舞台裏より愛をこめてvol.6 / 小笠原尚子 / n°295
舞台裏より愛をこめて番外編 / 小笠原尚子 / n°296
舞台裏より愛をこめてvol.7 / 小笠原尚子 / n°297
舞台裏より愛をこめてvol.8 / 小笠原尚子 / n°298
舞台裏より愛をこめてvol.9 / 小笠原尚子 / n°299

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